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第194話

今の状況に至って、由奈は、弥生が心が潰される前に海外に行って、瑛介から離れてほしいと願うだけだ。

だから、食事の間に思わず尋ねてしまった。「今聞くべきことじゃないのは分かってるけど、やっぱり聞きたいことがあって。おばあさんの手術、いつになるの?彼女はもう看護施設を出て、自宅にいるのよね?」

「うん」

弥生は由奈に対しては心を開いており、彼女が何を聞いても構わなかった。彼女は自分の唯一の親友に何も隠すことがなかったからだ。

「今は家で療養しているけど、手術の日程はまだ決まっていないの。前回おばあちゃんが倒れたから、お医者さんが彼女の心の状態をもっと整える必要があると判断してね、再び負担をかけないように、もう少し時間を置きたいって」

由奈はため息をつき、「じゃあ、しばらくはまだ手術ができないってこと?」

「そうね、おばあちゃんの病気が優先だから仕方ないわ」

由奈にとって、弥生の気持ちが最優先であり、瑛介のことを考える必要などなかった。

「おばあちゃんの病状は大事だけど、あなたのことも心配してるのよ」彼女は唇をかみ、思い切って口を開いた。

「正直言って、奈々の周りの人があなたに悪意を抱いてるんじゃないかって心配なの」

昨日の夜にあんなことがあったから、弥生への憎しみは相当なものだろう。

考えてみれば、彼女たちは弥生が瑛介の側にいること自体が許せないのだろう。でも、彼女たちが憎しみを抱くのは理不尽だ。

弥生は不倫をしているわけでもなく、奈々が瑛介と一緒にいるわけでもない。なぜ、彼女たちは弥生に恨みを抱く権利があるのだろう?

考えれば考えるほど由奈は苛立ち、食べる動きも荒くなった。

向かいに座る弥生がその動作に気づき、微笑みながら彼女を慰めた。「由奈、ありがとう、私のことを心配してくれて。でも、大丈夫よ、私はちゃんと分かっているから」

「あなたが分かっているとしても、他の人がそうとは限らないわよ。みんなが同じように良識や礼儀を持ってるわけじゃないから、昨日の夜みたいなことが起こった。そういえば、奈々はどこにいるの?ひどい怪我だったけど、顔に跡が残るんじゃない?」

その質問に対し、弥生は少し目を伏せ、冷淡な声で答えた。「そこまでじゃないけど、傷が深いから、跡が残る可能性はあるわ」

「跡が残る?」

由奈は一瞬驚いたが、思わず笑い出してしまった。
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